とりっこ》だから呉れないよ」
 蓮「私に宜《い》い工夫が有るんです、先方《さき》は大変に困って居る様子だから、可愛がって店賃《たなちん》を負けておやんなさいよ」
 金「店賃を負けるてえ訳にはいかない、地主へ遣《や》らなくっちゃアならないから」
 蓮「成る丈《た》け催促をしないようにおしなさい」
 金「催促するのも、少しは遠慮をして居るのよ」
 蓮「彼《あ》んな親孝行な娘《こ》は有りませんね、浪人ぐるみ引取っても構やアしない」
 金「親付きでか」
 蓮「親付きだって、あの浪人者なら宜いよ、あの浪人者を呼んで、お前さんね、親一人子一人だが、良い子を持ってお仕合せだ、どうせ宅《うち》へ養子をするのだが、甥の竹と云う者が奉公先から下《さが》って来れば宅の養子に成る身の上だが、彼《あれ》に添わしたいように思うが、お前|様《さん》も一人子《ひとりご》だから他《ほか》へ呉れる理由《わけ》にも行《ゆ》くまいから、一緒こたにお成んなさいと云って御覧なさい」
 金「馬鹿ア云え、そんな事が云えるものか、あの浪人は堅い男だ、毎朝板の間へ手を突いて、お早うと丁寧に厳格《こつ/\》した人だが、そんな篦棒《べらぼう
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