孫右衞門は養父じゃな、是なる清左衞門は其の方の実父で有ろう」
 筆「はい、……いゝえ」
 云わんと致しますると清左衞門が目で知らせるから口を開《あ》く事が出来ません。
 甲「何故言わぬ、此の者は其の方と面体恰好が能《よ》う似て居《お》るぞ、其の方が強《しい》て隠すと此の者は重き刑に行われるが、其の方の実父なれば、清左衞門の口から士道立ち難いに依《よっ》て申せまいが、其の方が申すに仔細はない、其の方の実父ならば実父だと申せば宜しい、実父と申すが悪いならば此の者の主家の名前を申せ、其の方が申すに仔細は無い事で有る、何処《どこ》までも云わんで居ると此の儘此の者を無実の罪に苦《くるし》むるは不孝で有ろうが」
 筆「はい/\申し上げます」
 側から藤兵衞が低い声で、
 藤「云いなよ/\、あゝやってお柔《やわら》かに仰しゃる事だから、云わないと宜《い》けないよ、隠し立てをしちゃア彼方《あっち》も盗賊《どろぼう》、此方《こっち》も盗賊、然《そ》う幾らも盗賊と心易《こゝろやす》くしちゃア困るから云いなよ」
 筆「はい、実は私《わたくし》の血を分けました親共でございます」
 と白状を致しました。其の時御
前へ 次へ
全134ページ中126ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング