から何《なん》だか家主にも薩張《さっぱり》分りません。家主の藤兵衞はあれ程の殿様だから嘘も吐《つ》くまい、併《しか》しよもやあの人が盗賊では有るまい、それにしても何《ど》う云う事であの金が彼《あ》の人の手に這入ったか、と考えて見たが少しも分りません、まさか彼奴《あいつ》が盗賊なら私《わたくし》が泥坊でござると云って奉行所へ出る気遣いは無いが何うしよう。と町代《ちょうだい》の與兵衞《よへえ》という者と相談の上で四ツ時に町奉行の茶屋に詰めて居ります。四ツ半に成っても来ません。
與「藤兵衞さん」
藤「えゝ」
與「何《なん》だかお前の云う事は当《あて》にならねえ、未《ま》だ来やアしねえ、何《な》んだか変だぜ」
藤「だって誠に品格《ひん》の好《よ》い、色白な眉毛の濃い、目のさえ/″\した笑うと愛敬の有る好い男の身丈《せい》のスラリとした」
與「男振や何かは何うでも宜《よ》いが是は来ないぜ」
藤「然《そ》うですな、おやお隣町内の伊勢銀さん何うです」
芳[#「芳」は底本では「若」と誤記]「なに盗賊が這入りまして金を二百両盗まれましたから訴えるんで、宅《うち》は大騒ぎです」
藤「昨夜《
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