すって」
 武「ゆるせと申したって連れだから貴様の名も書かなければならんよ」
 ×「へえ……私《わっち》ア、ガチャ留《とめ》と申します」
 武「ガチャ留と云う名が有るか」
 留「何《なん》だか知りませんが子供の時分から、ガチャ留ッてえます」
 武「留吉か留次郎か」
 留「其処《そこ》の処は私《わっち》どもの事ですからガチャ留でお負けなすって」
 武「負けると云う事はない、留吉か全く」
 留「えへゝゝ忘れました」
 武「自分の名をわすれる奴があるか貴様達は最《も》う宜しい」
 両人「有難う存じます」
 と両人は直《すぐ》に駈出して小田原迄逃げたと云うが、其様《そんな》に逃げなくっても宜しい。此の武家《ぶけ》は莞爾《にっこり》笑って直其の足で京橋鍛冶町へ参りました。又、親父の孫右衞門[#「孫右衞門」は底本では「孫兵衞」と誤記]は只おろ/\泣いてばかり居ます、家主も誠に気の毒で間《ま》が有れば時々見舞いに来ます。
 家「はい御免よ孫右衞門[#「孫右衞門」は底本では「孫兵衞」と誤記]さんお前|然《そ》う泣いてばかり居ちゃアいけないよ、其様《そんな》にくよ/\したって仕方がない、是はお前何うもそ
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