居候で」
武「だからよ、勘次と云う者が盗み取ってそれが露見をして目下其の娘は牢に居るんだな」
△「へえ牢に這入っちまいました」
武「それは可哀想な事で、町役人は何と云う」
△「町役人と云うと何《ど》う云う事で」
武「いえさ家主《いえぬし》だよ」
×「家主と云うのは何んで」
武「其の長屋の差配を致す者よ」
△「大屋でげす」
武「大屋てえ事はないが、まア大屋でも宜《よ》いその大屋は」
△「へえ、と藤兵衞」
武「藤兵衞か、宜しい、貴様の名を一寸書いて置こう、貴様は何と云う名だ」
△「へえ御免なすって」
武「謝罪《あやま》らんでも宜《い》い」
×「えゝ殿様、此者《これ》は全く喰《くら》い酔って迂濶《うっか》り云ったんで」
武「喰い酔うも何もない名前を云え、云わんか」
△「へえ大変だな、熊ッ子てえます」
武「熊ッ子と云う名前はない、熊吉か熊五郎か何うだ」
×「へえ慥《たし》か熊五郎」
武「慥か熊五郎と云う奴があるか、貴様は何んと云う名だ」
×「私《わっち》も……私《わっち》は何も云やアしません」
武「何も云わなくとも連れだから云えよ」
×「何うぞ御免な
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