附立書《うすずみつけたてがき》と云《い》ふので、何所迄《どこまで》も恰当《こうとう》な拵《こしらへ》、傍《かたはら》の戸棚《とだな》の戸《と》を開《あ》けると棚《たな》が吊《つ》つてあつて、ズーツと口分《くちわけ》を致《いた》して世辞《せじ》の機械が並んで居《ゐ》る。其此方《そのこなた》には檜《ひのき》の帳場格子《ちやうばがうし》がありまして、其裡《そのうち》に机を置き、頻《しきり》に帳合《ちやうあい》をして居《ゐ》るのが主人《あるじ》。表《おもて》の入口《いりくち》には焦茶地《こげちやぢ》へ白抜《しろぬき》で「せじや」と仮名《かな》で顕《あらは》し山形《やまがた》に口といふ字が標《しるし》に附《つい》て居《を》る処《ところ》は主人《あるじ》の働《はたらき》で、世辞《せじ》を商《あきな》ふのだから主人《あるじ》も莞爾《にこやか》な顔、番頭《ばんとう》も愛《あい》くるしく、若衆《わかいしゆ》から小僧《こぞう》に至《いた》るまで皆《みな》ニコ/\した愛嬌《あいけう》のある者《もの》ばかり。此家《こゝ》へ世辞《せじ》を買《かひ》に来《く》る者は何《いづ》れも無人相《ぶにんさう》なイヤアな顔の
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