ら何うも情《いろ》が出る、いやな油だ事よ」
三「そういう訳ではない御新造様」
美「御新造様なんて名をお云いな」
三「それ何うも凛々《りゝ》しく成っちまって気が詰ります……おかみさん、誠に何うも御無心に来たんです、芸者衆の処《とこ》に斯うやって帳面を持って貰って歩いて、金も集りましたが、是では何うも親子三人|行立《ゆきた》たないので……世帯《しょたい》を持たして何《ど》んな商法でもさせたいと思ってもお母《っか》さんが目が悪いんですから、と云って親の有る者は育児院では入れてはくれますまいから、仕様が無いから、何うか工夫をするにも金さいありア附かない事も有りません、それは他でも有りません、あなたを日頃御贔屓にした奧州屋の」
美「奧州屋の、おや」
三「それ美土代町の新助さん、妻恋坂下の切腹三法南無三法さ」
美「あゝそうかね、それが何うしたの」
三「何うしたって仕ねえって、驚いたね何うも、駒込の安泊《やすどまり》に居るってえんで、何だか目が潰れてしまって、本郷の切通《きりどお》しを下りるにも三|度《ど》とか四|度《たび》とか転んだが、下へ転がり切らなけりゃア、落著《おちつ》いてこれから歩き出すと
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