切な男で、車を拵えて、余り遠くも有りません御徒町松山園に参り、台所から、
三「へい今日《こんち》は、夜分|晩《おそ》く出まして、相済みません」
婢「はい入らっしゃい何方様《どちらさま》」
三「えい御叮嚀《ごていねい》では困ります、数寄屋町の三八で」
婢「勘八《かんぱち》さんと仰しゃりますか」
三「勘八ではございません、三八ですとそう仰しゃって下さいまし」
婢「はい、あの何です数寄屋町の雁八《がんぱち》さんという方が入らっしゃいました」
三「何うでも間違ってやがらア」
美「そう、おやまア何だね、表から這入れば宜《い》いのに」
三「いえお店の方から這入って茶の壺を引倒した事がございますから……誠に御無沙汰致しました」
美「もし此方《こっち》へお上んなさいな」
三「お取膳《とりぜん》で、八寸を四寸ずつ喰う仲の善さ、という川柳があります」
美「何をえ」
三「何でも始めは穢《きたな》い物を連れて来たが、段々綺麗なお話に成るので……旦那誠に御無沙汰を」
庄「おや、さ、此方《こちら》へお這入んなさい」
 膳を片附けそうにするを無理に止めます。庄三郎は織色《おりいろ》の羽織を著《き》まして、二子《ふた
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