て下さりゃア私ア其の金を資本《もとで》にして一商法《ひとしょうほう》、私が宜くなりゃ浜に居る妹《いもうと》も引取って、又お前《めえ》さんに恩返《おんげい》しの仕《し》られねえでもない、そうすりアおまはんの些《ちっ》たア罪も消えると云うもんだ」
庄「うゝ先刻《さっき》の煙草入はそれじゃア手許《てもと》に有るかえ」
徳「ふむ有る/\それでねえ」
庄「なアに私《わし》が落した煙草入と違っている、紋は実の花菱と云ったが、一寸《ちょいと》出して見な」
 車夫《くるまや》の出すのを取って、
庄「提灯を上げて見な」
徳「えゝ是でがす、よく御覧なせえ」
庄「はア此りゃアなんだ違うよ、大変違うよ(懐中に入れる)」
徳「どゝゝゝ懐に突込《つッこ》んじゃいけません、懐に突込んじゃア」
庄「宜《い》いよ、違っても違わんでも彼《あ》の時に挽いた若衆《わけいし》と云やア何にも云わず五十円で買おうが、決して他言をしてくんなさんな」
徳「そりゃア必ず云いません、今こそ車夫《しゃふ》だが大西徳藏、聊《いさゝ》か徳川の臭《くせ》い米を食って親を泣かした人間だから、云わんと云ったら口が腐っても云いはしない」
庄「それで安意
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