ならば」
 とて福寿庵の女房を呼び、何やら密々《こそ/\》耳こすりを致し、お美代を蠣殻町まで一人で帰す事に相成り、一人乗の車を別に雇い、お美代を先へ帰して置いて、自分は大西徳藏の車に乗って金策に谷中の蛍沢《ほたるざわ》にまいるというお話でございますが、一息つきまして申し上げます。

        六

 へい藤川庄三郎、彼《か》の大西徳藏という車夫《くるまや》に供をさせて、人力でどっとと降る中を谷中の笠森稲荷《かさもりいなり》の手前の横町を曲って、上にも笠森稲荷というが有りますが、下の方が何か瘡毒《そうどく》の願《ねがい》が利くとか申して女郎|衆《しゅ》や何かゞ宜くお詣りにまいって、泥で拵《こしら》えたる団子を上げます。あの横町を真直《まっすぐ》に往《ゆ》き右へ登ると七面坂、左が蛍沢、宗林寺《そうりんじ》という法華寺《ほっけでら》が有ります。その狭い横町をずうッと抜けると田圃《たんぼ》に出て、向うがすうっと駒込の方の山手に続き微《かす》かに未《ま》だ藪蕎麦《やぶそば》の灯火《あかり》が残っている。田圃道で車の輪が箝《はま》って中々挽けません。
徳「旦那いけませんな、こんな道じゃア何う
前へ 次へ
全113ページ中79ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング