往《ゆ》きますと手数が掛っていけませんや、そっくり貴方の御定紋《ごじょもん》だから持って入らっしゃりゃア私《わっち》が是を拾ったとも云いやせんが」
庄「買っても宜《い》いけれども幾許《いくら》で売ろうてえのだ」
車「こんな物で、幾許でも宜うがす、まア人に聞いた処の価値《ねうち》は五十両が物は有るってえので」
庄「なにが、冗談いっちゃアいけねえ、無垢《むく》の煙管の誂えで、何《ど》んなにしたって、何う目方が附いたって五十両なら出来るじゃアねえか、こればかりの鉈豆の煙管を五十円遣って買う奴が」
車「たゞの煙管とは違うんで、紋がちゃアんと御新造様の紋とあなたの紋と比翼に付いて居るとこがこいつの価値《ねうち》だ、はゝア誂れえりゃア出来るが、わっちが持って居るといけねえものだ、持って居れば拠《よんどこ》ろなく訴えなければならねえ、去年の九月四日の晩、妻恋坂下の建部…………サだからって」
庄「む……なに」
車「拾った処《とこ》を云わなければならないが、御迷惑が掛っちゃア済まねえから、売りてえのを我慢して、何うか御当人にお渡し申してえと思って、今まで腹掛の隠《かくし》に突込《つッこ》んでいた所が、何
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