つア妙じゃアございませんか、これが突込《つっこ》んだ儘《なり》で有るんでがすが、悉《そっ》くりお両方《ふたかた》の紋が比翼に付いて居るてえのは何うも妙で、一寸《ちょっと》これは何うです旦那……」
手に取り上げて庄三郎が恟《びっく》りいたした。まだ是は美代吉には話をせずに自分の心の中《うち》の惚気《のろけ》に、美代吉の紋と吾が紋を比翼に附けて誂《あつら》えた鉈豆の煙管、去年の九月四日の夜《よ》、妻恋坂の下で、これは慌てゝ取り落したものだが、何うして此の車夫《くるまや》が持って居るかとぎっくり胸に応《こた》えましたが、側にお美代が居るから、
庄「お美代お前《まえ》と己の紋が有る、似た紋も有るが不思議じゃアねえか、不思議じゃアねえかよ、えゝ悉《そっ》くり二人の紋が付いてるとは是りゃア不思議じゃアねえか」
美「誰の」
庄「誰のだか分らねえ……車夫《くるまや》さんお前《めえ》がそれを持とうというのか」
車夫「わっちが持って居たって仕様がねえんでがすが、あなた紋が悉《そっ》くり附着《くッつ》いて居やすが、お廉《やす》く何うか廉くお買いなすって下さりア有難てえんですがな、わっちが質屋なんぞに持って
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