ちき》が何も奧州屋さんと交情《わけ》でも有りはしまいし、あの旦那だって私を色恋で何う斯うという訳ではなし、何かお父《とっ》さんと歌のことで仲好くして、世話にも成った事があるから、身請をして遣ろうと云った時に、お婆さんが彼《あ》んな事を云ったもんだから、お前さんも訝《おか》しく思いなさるんだが、私《わたし》ゃ本当に奧州屋さんばかりは何にもいやらしいことは無いの」
庄「いやさ、いやらしい事が有る無しじゃアない、たとえ何もなくても一度でも呼ばれたお客が死んだと云えば、その命日には線香の一本ぐらい上げるのは、たとえ芸者でも其処《そこ》が人情じゃアないか、今日は両人《ふたり》で彼《あ》の人のお寺詣りをして遣ろうじゃアないか、広徳寺《こうとくじ》へ往って」
美「広徳寺というのは彼の人のお寺、あんた能《よ》く御存じで、何うして知って居るの」
庄「なゝなに此の間|他《わき》で聞いたのだ、一寸志だから」
美「厭《いや》だアね、人…たった五六|度《たび》呼ばれたお客の死んだ度《たんび》にお寺詣りするくらいなら、毎日お墓詣りをして居なければなりやアしない詰らないじゃアないか、お止しなさいな」
庄「お前《めえ
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