の年も経ちまして、翌年九月までと云うものは極《ごく》愉快にして暮していたが、唯《たゞ》心に絶えぬのは新助の事です。兄新助のお金で私《わし》は斯うやって身請をして、思う女と夫婦に成ったが、美代吉は知らずに居る事の気の毒さよ。ちょうど四日が命日だというので、毎月四日の日には自分で香花《こうはな》を手向《たむ》け、仏壇に向って位牌は無いけれども、心の中《うち》で回向《えこう》して居る。九月四日は最《も》う一周忌の命日でございますゆえ、
庄「おいお美代」
美「はい」
庄「今日はお茶の御飯《ごぜん》を炊かないか」
美「お茶の御飯は私ゃ嫌《きらい》、赤のお飯《まんま》をお炊きなさいな」
庄「まア今日はお前《めえ》を贔屓にしてくれた美土代町の奧州屋さんの丁度一周忌の命日で、此の間美土代町を通ったら彼処《あすこ》の家《うち》は変ってしまって今は乾物屋になった、此処に洋物屋《とうぶつや》が有ったのだと思うと、余《あんま》り善《い》い心持のものでも無い、おいらも一度でも遇《あ》ったのだから、志だから水菓子でも取って仏壇へお茶でも」
美「きまりだよ、お前さんは奧州屋さんのことをおかアしく云うけれども、私《わ
前へ 次へ
全113ページ中66ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング