角はなし、お金を遣れば遣る程お酒を飲んで、只怠けてしまうだけの事で、お前さんにお金を上げると態《わざ》と酒を飲ましてよいよいにする様なものだから上げませんよ」
徳「よい/\……最う是切り来ねええゝッぷ、何うぞ、恐入った妹《いもうと》、妹と云っては縁が切れてるから奧州屋新助|殿《どん》のお内儀さんに対して大西徳藏|斯《かく》の如くだ(両手を突き頭を下《さげ》る)矢張是も親の罰《ばち》だ、親の罰だから誠に何うも困る、うむ最う己は縁が切れたから己にすると思ってもいけない、親、親にすると思って……」
ふみ「なにお前さんは親の家《うち》を潰してしまった人だわ」
徳「後生だから」
福「大変大変お内儀さん大変でございます」
ふみ「何だね、仰山な」
福「旦那が腹ア切ったッてえ知らせが………妻恋坂下で旦那が腹ア切って居るって、気が狂《ちが》ったんでしょうか」
ふみ「旦那が妻恋坂下で腹、まア誰か往って見たのか」
 これを聞くと徳藏は、
徳「はてな妻恋坂下と云えば昨夜《ゆうべ》乗せた客だが、あれが奧州屋新助では無いか」
 と気が附いたから少し酒の酔《えい》が醒《さ》めた。
徳「直ぐに帰るから、些《ちっ》と無
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