又三十両お上げなすった、もう是切り参りませんと云っても度々《たび/\》来る、それは内証で私も二両や三両の事なら何うにかして上げたが、何度来ても旦那は会いはしない、お前さんも旦那の顔は知るまいけれども、兄《あに》さんが借りに来た様子だ、沢山《たんと》の事でも有るまいから、時々は些《ちっ》と宛《ずつ》小遣を持たして遣るが宜《よ》いとお前さんが這入って来ると表から外《はず》して出る、貸して遣れと云わんばかりに親切にしておくんなさる旦那の前に対しても、私はお貸し申す訳には往《ゆ》きません、此の盆前に来てお前さん幾許《いくら》持って往ったえ、二十円持って往ったろう………其の時もう来ないと云ったでは無いか、その口の下から直《すぐ》借りに来るとは実に私は呆れてしまった………貸されませんよ」
徳「まことに済まん、貸されなきゃア致し方がない、無いけれども何うも其の日に逐《お》われて飯が食えんという事に成ったから、まことに何うも困る……何うあっても貸されんか」
ふみ「借りに来られた義理じゃア有りませんよ」
徳「義理も道も心得ては居《い》るけれども、何うも一向仕方が無い」
ふみ「貸せたってお前さんには返す方
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