底本では「とじこ」]んで硝子戸へ衝突《ぶツ》かり、障子を打毀《うちこわ》すなどという乱暴なのもありますが、この三八は誠に人の善《よ》い親切な男で、真実《まめ》に世話をするので人に可愛がられますけれども、芸は余り宜くは有りません。四入青梅《よついりおうめ》の小さい紋の付きました羽織を着て、茶献上の帯を締め、ずか/\と飛出《とびで》て来て、三橋《みはし》の角で出会いました。
旦「おい師匠々々」
三「これは旦那………何方《どちら》へ」
旦「此処《こゝ》で君に遇《あ》おうとは思いきやだ」
三「先達《せんだっ》ては誠に有難う、あの時旦那がお帰りになったのを知らないで、御酒《ごしゅ》を戴き過して、気を許して寝てしまい、お帰りになった後《あと》で目が覚めて驚きましたが、二度目にお目にかゝった時、寝たの寝の字もおっしゃらないなぞてえのは、実に貴方《あなた》のような苦労をなすったお方は沢山《たんと》無《ね》えって、蔭でのろけて居りますんで」
旦「君に惚《ほれ》られちゃア有難てえフヽヽ」
三「からかっちゃアいけませんが、何方へ入らっしゃいました、此の間お宅《うち》へお寄り申そうと思いまして参ると、番頭さん
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