すね、朝からお酒を飲んで、お前さんは始終は身体を仕舞いますよ」
徳「何うせ果は中風《よい/\》だ、はゝゝだが酒が一滴も通らなけりア口の利けねえ徳藏だ、予《かね》てお前も知ってる通りのことだ、前々《まえ/\》勤務《つとめ》をしている時分にも宜しく無いから飲むなてえが、飲まんけりア耐《たま》らん、殊更寒い昨夜《ゆうべ》は雨が降り、斯《か》くの如く尾羽打枯《おはうちから》して梶棒に掴《つか》まって歩るいたって、雨で乗手が少ない、寒くって耐らんから酒を飲むと、自然と車の輪代《はだい》がたまって、身代もまわりかねるような事に成って、はゝゝ如何んとも何うも進退|谷《きわ》まってね、誠に済まんけれど金え拾両ばかり貸してくれ」
ふみ「何を……判然《はっきり》仰しゃい」
徳「金を十両拝借致し度《た》いという訳だ」
ふみ「私の処にお金を借りに来られる訳じゃア有りますまい」
徳「訳が有りア謝って来やしねえ、訳が少し無いように成って来たから止むを得ず只誠に重々恐れ入って、拝借を願うというようなマア訳だね」
ふみ「はアお前さんは私とは縁が切れて居ますよ、最う此方《こっち》へ私の籍を送ってしまえば、奧州屋の者でご
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