口でげすから」
徳「いや店から上って悪いという次第もないけれども、併しながら何処から上っても五分だ………大層|代物《しろもの》が店に殖えたな」
福「何うもまことに仕入が間に合いませんで」
徳「なんだア、汝《てまえ》なんどは生利《なまぎき》に西洋物を売買《うりかい》いたすからてえんで、鼻の下に髯《ひげ》なんぞを生《はや》して、大層高慢な顔をして居ても、碌になんにも外国人と応接が出来るという訳じゃアあるめえ」
福「そんな事は兎も角も、お内儀さんがお目に懸るってますからお早く」
徳「あゝうい此家《こちら》ア裏ア何処だ……裏ア」
ぱたり/\と此方《こちら》の羽目に打突《ぶつ》かり、彼方《あちら》の壁に打突かって蝋燭屋の裏に這入り、井戸端で。
徳「此処か、奧州屋の新助の宅《たく》は此処かな」
ふみ「お芳《よし》や、そこ開けて遣っておくれ……此方《こっち》だよ、此方へお這入りなさい……あらまア穢い服装《なり》でマア、またお出でなすったね」
徳「又だア……其の後《のち》は打絶《うちた》えて……御無音《ごぶいん》に……何時も御壮健おかわりも無く……大西徳藏|大悦《たいえつ》奉る」
ふみ「何だね困りま
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