き破って片足踏み出すと、
庄「思い知ったか」
と組附くように合口を持って突ッ掛りまして、ちょうど奧州屋新助の左の脇腹のところをぷつうりと貫いた。
新「うゝん」
と云いさま、此方《こちら》も元は会津の藩中|松山久次郎《まつやまきゅうじろう》…聊《いさゝ》か腕に覚《おぼえ》が有りまするから、庄三郎の片手を抑《おさ》えたなり、ずうンと前にのめり出し。
新「暫く/\逸《はや》まっちゃア成りませんぞ」
庄「なに宜く先程は失敬を致したな、一分《いちぶん》立たんから汝《てまい》を殺し、美代吉をも殺害《せつがい》して切腹いたす心得だ」
奧「暫く/\何うぞ………逸まった事をして下されたなア藤川氏……手前は美代吉の色恋に溺れて身請を致すのではござらん、美代吉の真実の兄で松山久次郎と申す者でござるぞ」
庄「へい、なに松山…――美代吉の兄とはそれは又何ういう訳」
奧「フムそれは………まだ/\/\………あッあ斯《か》く成り行《ゆ》くは皆《みん》な不孝の罰《ばち》である……手前《てまい》二十四歳の折に放蕩無頼で、元の会津の屋敷を出る折に、父が呆れて勘当を致す時に一首の歌を書いて、その短冊を此の久次郎に渡された
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