ことには若様育ち、あれ程にまで云いかわし、惚れた美代吉を身請をされては何うも友達へ外聞が悪い、親や親戚に打明けて身請までにと思った処を他《た》へ買取られては一分《いちぶん》立たん………と云う血気にはやって分別も無く、妻恋坂下の建部内匠頭の窓下に待って居るとも知らぬ奧州屋新助が、十九ケ年振りで真実の妹《いもと》に遇《あ》い何うか身請をして松山の家を立てさせて、思う男の藤川庄三郎に添わしてやりたいと腹で種々《いろ/\》に考えて、明後日《あさって》は身請をする心持で車夫《しゃふ》を急がしても、車夫《くるまや》は成りたけのろ/\挽《ひ》いて、困ると酒手が出たらそれから早く挽こうという、辻車は始末にいかない。幌が少し破れて、雨がぽたり/\と漏ります。梶棒の尖端《とっさき》を持ってがた/\揺《ゆる》がせて、建部の屋敷裏手までまいると、藤川庄三郎曲り角の所から突然《だしぬけ》に車夫《しゃふ》の提灯を切って落した。車夫は驚いて、どーんと筋斗《もんどり》を打って溝の中へごろ/\と転がり落ちましたが、よい塩梅《あんばい》に車が反《かえ》りません、機《はず》みで梶棒が前に下りたから、前桐油《まえどうゆ》を突
前へ
次へ
全113ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング