ごぶがり》が彼《あれ》が宜しいと、粋《いき》な様だが團十郎が致したから團十郎刈と云うと、大層名が善《よ》いが、よく/\見れば毬栗《いがぐり》坊主だから悪く云ったら仕方の無いもんだが、あれが流行《はやり》と成ると粋に見えます。今では前の方にばらりッと下《さが》ったのが流行ります、あれはまア乱れて下ったのかと思うと結髪床《かみいどこ》での誂《あつら》えです、西洋床の親方なんぞは最《も》う心得て居りますから、先方《むこう》から、
床「どの位に………」
客「前の方に五十六本」
なんて申したって分りません、仮令《たとえ》長く下げまして、末には目の上にまで被《かぶ》さって、向うが見えないように成って、向うから人が来て、
甲「今日《こんち》は」
乙「へい(髪を両手にて掻上げ右左と顧《かえりみ》る)え、何方《どなた》です」
なんてえ訳で、両方の手で分けて見たり何《なん》かするのは可笑《おか》しゅうございますが、其の頃は散髪《ざんぎり》に成っても洋服を召しても、未だ懐中《ふところ》には煙管筒《きせるづゝ》の様にして、合口の短刀を一本ずつ呑んで居《お》ったもの、されば徳川の禄を食《は》んだ藤川庄三郎、
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