くと、奧州屋新助が美土代町へ帰るようだから。
庄「ムウ彼奴《あいつ》が美土代町へ帰るならば宜しいたゞア置くものか」
 と煙管筒《きせるづゝ》に合口《あいくち》を仕込んだのを持って居ます。今新助が車に乗る様子を見ていると、表までどろ/\送り出し、
皆々「左様ならば、左様ならば」
婆「何うぞ明後日《あさって》はお待ち申して居りますが、何時頃《なんどきごろ》おいでになりますか」
新「二時頃には来る積りだよ」
婆「是非おいでを……ちゃんと掃除をして置きまして、皆《みんな》子供たちにも話を致して置きます、左様ならば御機嫌宜しゅう……車夫《くるまや》さん気を附けて成りったけ早くお頼み申しますよ」
車夫「早くたって歩くだけにしか歩けません」
婆「人の悪い車夫だよ、ぶら/\歩かれちゃア仕様がない」
車夫「そんなに急がなくっても車が廻るから自然《ひとりで》に往《い》かれるんで」
婆「それじゃア車を引くのじゃアない、車に引かれて往《ゆ》くのだ」
新「そんな野暮なことを云うな……ムーン破けてるひどい前掛だなア、愛敬の無《ね》え車夫だね……車夫さん幌は漏りゃアしないか」
車夫「大丈夫で」
 と是から梶棒の先を
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