、お客様が入らっしってお邪魔になったら帰りますよ、何も然んなに薄情な事を云わないでも宜い……美代吉お前《めえ》が身請になる事は少しも知らなかったが恐悦だねえ」
美「あれさ身請たって、まだ今話があったばかりで決りもしないのに、あんな事を云って」
庄「なに宜しい、まことに恐悦だ、洋物屋《とうぶつや》だか乾物屋だか知らねえが、誠に結構だ……何方《どなた》も甚だ失敬」
新「まア宜しいじゃアございませんか、お母《っかあ》の云いようが悪いから誰でも怒《おこ》らア、美代吉|種々《いろ/\》是には話の有る事だから、後で私《わし》から話をするから、お前往ってあの方の機嫌を直して帰すが宜《い》い」
美「はい/\」
 とおど/\しながら庄三郎の出かゝる上り口まで参りまして、
美「ちょいと藤川さん」
庄「なぜ出て来た」
美「出て来たって今身請の話が始まったばかりで、何だか訳も解らないのに、あんな事を云って、色でも恋でも有りゃアしませんよ、私《わちき》のお父さんを歌俳諧の交際《つきあい》で知って居るから、身請をして妹分にして、松山の姓を立てさせて遣り度いって今話があったばかりなんですのに、気前《きぜん》を悪くし
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