誠に何うも有難い事でございます」
新「僕も少し頼まれた事が有ってその実は横浜まで買物に往《ゆ》かなければならんから、それでは明後日《あさって》という事に極めましょう、何が無くとも赤の御飯ぐらい炊いて、目出度い事だから平常《ふだん》馴染《なじみ》の芸妓|衆《しゅ》でも招《よ》んでね」
婆「誠に何うも有難い事で、然《そ》んなれば是非明後日はお待ち申します……美代吉や、ほんとに御親切なんて、何うもこんな有難い事は有《あり》ゃアしないよ……お間違い有りますまいね」
新「間違える所《どこ》じゃない、お母さんの方でさい違わなけりゃア、此方《こっち》で約を違《たが》える気遣いは無いのだから」
婆「実に何うも有難い事で、左様なら明後日は何時頃《なんじごろ》に入らっしゃいます」
新「二時少し廻った時分迄には屹度来るから、其の積りで約定《やくじょう》を極めてさえ置けば宜《い》いのだ」
三「美代ちゃん大変に宜《よ》い事が有るんで」
 と幾ら傍《そば》で云っても美代吉は少しも嬉しい顔付が無いというは、本所北割下水《ほんじょきたわりげすい》に旗下《はたもと》の三男で、藤川庄三郎《ふじかわしょうざぶろう》という者
前へ 次へ
全113ページ中26ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング