作も無い事でございましたが、今では身請というと実に方々《ほう/″\》さまの相場が大変な事で……」
三「ほうらそろ/\始まった、これだからうっかりした事は云われない……お母さん然う前置から詞《ことば》を振《ふら》ずに前文無しで結著《けっちゃく》の所を云って下さらなくっちゃア困りやすで……旦那あなたの思召《おぼしめし》は」
と袂《たもと》の中へ手を入れて、指を握り合って相談をする。
三「えゝ、成程……お母さんちょいと手を私の袂の中へ突込《つっこ》んで下さい、これが流行物《はやりもの》だから何うでげしょう、このくらいでは」
婆「はい……誠に有難い事でございますけれども、お師匠さん、私どもは外に宜《い》い抱えも無いのでございます、今美代吉が出てしまえば、何《いず》れ誰か外《ほか》に宜《よ》い抱えを為《し》なければなりませんが、そんならばと云って出たから直《すぐ》にお客が附くという訳でもなし為《し》ますから、それでも何うも少し話が折合いませんねえ」
新「じゃアお母さん何うぞ五百円ぐらいの所で話を極めておくんなさいな」
三「お母さん、そんなら宜うございましょう、こんな相場は有りませんから」
婆「
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