んで……」
旦「私《わし》はお前のお父さんには歌俳諧の道で御贔屓になったこともあり、十九年振でお前に会うとは誠に妙だ……師匠何うも妙だな」
三「まことに妙でげすね………併《しか》し何だか大変に陰気になったじゃア有りませんか」
旦「どうか此の娘《こ》を身請《みうけ》を致し度《た》いものだ」
 と是から美代吉の身請の相談に及ぶ。これが一つの間違いに相成るお話でございます。

        二

 奧州屋新助が、美代吉を我が実の妹《いもと》と知りまして身請の相談に及びましたが、娼妓の身請はよく有りますけれども、芸妓の身請は深川ばかりで、町芸妓の身請という事は余り昔は無かったものでございますが、開《ひら》けて来るので当時は身請が流行でございます。
新「おい師匠々々」
三「へえ」
新[#「新」は底本では「旦」]「ちょいとお母《っかあ》に君から相談して貰いてえな、何と此の娘《こ》を身請えしてえんだが、馬鹿な事を云われちゃア困るんだ、大概《てえげえ》相場も有るもんだが、何うだろう、身請をするには何《ど》のくらいのものだろう」
三「それは何うも大変に芝居が大きくなって来ましたね、この娘《むすめ》を身
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