《いくさ》にでも出て討死もしかねない気性ですから、大方死んでゞもしまったろうと常々|母親《おふくろ》が申して居りましたが、その兄さえ達者なれば会う事も有りましょうが、尤《もっと》も小さい時に分れたのでございますから、途中で会っても顔は知れませんけれども、何卒《どうぞ》して生きて居るなら、その兄に会いたいと思いまして弁天様へ願掛《がんがけ》を致して居りますけれども、いまだに知れませんから、本当に私は独りぼっちでございます」
旦「然うかえ、お前が生れて間もなく分れた兄《にい》さんだから、顔形も知れまいが親身の兄と思えばこそ然うやって神信心《かみしんじん》をして会いたいと願掛までして居ればこそ、ふといやなに…屹度《きっと》会うような事になるに違いないが、その事を兄《あに》さんが聞いたら嘸《さぞ》悦ぶだろう、然うかえ……どう云うわけだか松源へ初めてお前を呼んだ時から、何となく私《わし》の子のように思われて可愛いと思ったが、妙なものさね」
三「へえ美代ちゃんは久馬様のお嬢さんなんでげすか、道理で初めから久馬様の相が有りましたよ、何かその遊ばせ言葉などの所は違《ち》げえねえ、成程七百石のお嬢さまな
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