難う存じます」
旦「いや何うもお礼では痛み入ります」
三「お母《っか》さん何か一寸《ちょいと》お飯物《まんまもの》を色取りして何うか……」
婆「はい畏《かしこま》りました……ちょいとあの美代吉や下りてお出で、美土代町の旦那様が入らっしったよ」
美「はい」
 と返事をいたし、しと/\階子《はしご》を下りて参り、長手の火鉢の前に坐りましたが髪が、結《い》い立《たて》でお化粧《しまい》の為立《した》てで、年が十九故|十九《つゞ》や二十《はたち》という譬《たと》えの通り、実に花を欺くほどの美くしい姿で、にやりと笑い顔をしながら物数《ものかず》云わず、
美「よくお出でなさいました」
旦「今広小路で師匠に会ったからちょいとお母さんにお近附《ちかづき》に成ろうと思って来たのさ」
三「美代吉さん、何うも私の方は慾でげすが、旦那の方は御厄介になって余り感心しないが、それを一緒に往《ゆ》くと仰しゃるのでお供をして此方《こちら》へ来たのてえのは、其処《そこ》に種々《いろ/\》御親切な話が有るんで、本当に後《あと》でお聞《きか》せ申したい事が有るんでげすぜ」
美「それはほんとに嬉しい事ねえ」
婆「今お土産を戴
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