ないよ、奧州屋の旦那様が外《ほか》に何《ど》んな無理なお客が有っても、十二時を打ったらずん/\帰れと云って下すったが、そんなお客様は無いてッて何時も旦那様のお噂ばかり申して居りますので」
三「何《なん》しろ美代ちゃんをちょいと」
婆「今お湯から帰って、ちょいと二階で身化粧《みじまい》をして居ますよ」
旦「それは丁度|好《い》い所だった……師匠お母さんに其のオイお土産を………」
三「左様で………母親さんには是だけ……女中は慥《たし》か両人《ふたり》でしたねえ……これは旦那から」
婆「まア何うも有難う存じます、何《どう》ぞ旦那様へ宜しくお礼を仰しゃって下さいまし……旦那これからは何うぞ何方《どちら》へ往らっしゃいまして、御膳を上りましても詰らない御散財でございますから、美代吉の所へ往《ゆ》って惣菜で安く食べて往《い》こうと云うようにお心易《こゝろやす》く、ちょい/\入らっしゃッて下さいまし、然うすると此方《こちら》でも誠に気が置けませんで宜しゅうございますから、これを御縁として何うかちょい/\入らしって下さいまし………お前方|皆《みん》な此方《こっち》へ来てお礼を申しな」
下「誠にどうも有
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