松屋の婆さんは出しませんね、何うかお前さん旦那も来て始めて逢った時にもあゝしてくれたんだからと云っても、決してそんな事をする義理合《ぎりあい》は有りませんと云うような顔附から、慾にばかり目を附ける婆《ばゝあ》で、彼奴《あいつ》は腹でも切りそうな婆です………まお暇《いとま》致しましょう、へい左様なら御機嫌宜しゅう」
美「まことにお草々《そう/\》致しました、車でも」
三「えい私の家《うち》に帰るんですから、なに車も待たして置きましたから、ちょうどあの車に乗って帰ります、へい左様ならお女中、御新様《ごしんさま》それじゃお泊《とま》んなすって………左様なら」
と三八は帰ってしまう。これから温《あった》かい物でお飯《まんま》を食べさせて、親子の者を丁寧に客座敷の方《かた》に寝かして、自分は六畳の茶の間の方に寝ました。夜《よ》が明けると、お美代が側に床を並べて寝ていた庄三郎の居ないに驚いた。
美「何処へ往ったろう………旦那は何処かへお出でなすった………兼《かね》や(下女の名)旦那はお手水《ちょうず》かえ」
兼「いゝえ存じませんよ、先刻《さっき》から此処で焚き附けて居りますが、知りませんよ」
美
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