てるのは慾が肉と筋の間へからんで、慾肥りてえのは彼《あれ》から初まったでげす……じゃア美代ちゃんの家へ入らっしゃいまし」
と三八が先に立ち数寄屋町へ這入り、又細い横町へ曲り、
旦「此方《こっち》へ曲るのかえ」
三「此方《こちら》へ入らっしゃい……えゝ此処で、有松屋《ありまつや》という提灯《ちょうちん》の吊してある処で」
旦「法華宗《ほっけしゅう》なのかえ」
三「何でも金にさえなれば摩利支天様《まりしてんさま》でもお祖師様《そしさま》でも拝むんで、それだから神様の紋散《もんじら》しが付いて居るんで……母親《おふくろ》さん今日《こんち》は、お留守でげすか……美代ちゃん今日は」
婆「あい誰だえ、安《やす》どんかえ」
三「あれが婆《ばゝあ》の慾から出る声でげすが、酷《ひど》いもんで……えゝ三八でげすよ」
婆「いやだよ何だねえ、ずっとお這入りな表からお客様振ってさ」
三「御免なせえまし、ヘヽヽ今日は……」
婆「此の間はあれっきり来ないもんだから、わたしは本当に困ったよ、皆さんから後《あと》で話が有って………これからは持って一々来て見せなくちゃア困るじゃアねえか」
三「ところが梅素《ばいそ》さん
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