女タ、その煙草入は私《わっち》が銀座の店で蟠龍軒に売った品、御新造の敵《かたき》は確かに蟠龍軒でございますぞ」
 お町は恟《びっく》りして、
 町「え、父の敵はあの蟠龍軒ッ」
 亥「御新造、あなたのお父《とっ》さんの敵が蟠龍軒と知れて見れば、この敵討《かたきうち》をせざアなりませんよ」
 友「そうとも/\、此品《これ》こそ何よりの証拠、私《わし》が確かに証人でござります」
 と一同歯がみをなして居ります処へ、家守《いえもり》の吉右衞門《きちえもん》が悦ばしそうに駈けてまいりまして、
 吉「皆《みん》な悦んで下せえ、今日お奉行所よりのお達しで、旦那様が御赦免になりました、もう直ぐにお帰りでございます」
 亥「えッ、旦那が赦免だ、そりゃア有難《ありがて》え」
 國藏と森松は気も顛倒《てんどう》して、物をも云わず躍《おど》り上って飛出し、文治の顔を見るより、あッと腰を抜かしてしまいました。
 亥「そんな処で腰を抜かしてくれちゃア困るじゃねえか」
 と大騒ぎ。近所では火事と間違えて手桶《ておけ》を持って飛出すもあれば鳶口《とびぐち》を担《かつ》いで躍り出すもあると云う一方《ひとかた》ならぬ騒動
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