ゥると、枕元でキャッという叫び声、さては人殺しと寝ぼけ眼《まなこ》で曲者の腰の辺《あたり》へ噛《かじ》り付いたが、その曲者も中々|堪《こた》えた奴で、私《わっち》へ一太刀《ひとたち》浴《あび》せやがった、やられたなと思ったが、幸いに仕事の帰りで、左官道具をどっさり麻布《さいみ》の袋に入れて背負《しょ》っていたので、宜《い》い塩梅《あんばい》に切られなかった、振放す機《はずみ》に引断《ひっちぎ》った煙草入、其の儘土手下へ転がり落ちた、こりゃ堪《たま》らぬと草へ掴《つか》まって上《あが》って見たら、何時《いつ》の間にか曲者は跡を晦《くら》ましてしまう。翌日《あくるひ》聞けば殺された奴は盲目《めくら》の侍だそうで、其の時図らず取った煙草入だが、持っていちゃア悪かろうとぐず/\している中《うち》に親父の大病、医者に掛けるにも銭はなし、脊《せ》に腹は代えられねえから、一時の融通に旦那へお預け申しましたが、其の儘になっているのでさア」
 町「亥太郎さん、それは確かに五月三十日のことですね」
 亥「えゝ、勘定取った帰りがけで」
 町「その殺された侍は盲目でございますか」
 亥「いかにも」
 友「もし
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