tの作、緒締《おじめ》根附《ねつけ》はちぎれて有りませんが、これは不思議な品で、私《わたくし》が銀座の店に居りました時、手掛けた事のある品物でございますぜ」
 と噂をすれば影とやら、表の方《かた》から亥太郎がやってまいりました。

  二十一

 亥太郎は門口に立ちて、
 亥「えゝお頼み申します、亥太郎で、滅相《めっそう》お暑くなりました」
 と云う声を聞付けまして、
 友「これは/\豊島町の棟梁、さアお上《あが》りなさいまし」
 森「さア/\棟梁お上んなせえな」
 亥「御免よ」
 友「いや棟梁、一寸《ちょっと》お聞き申しますが、此の煙草入は貴方《あなた》がお持ちなすっていたのですか」
 亥「持ってたと云う訳じゃアありませんが、実はこりゃア桜の馬場の人殺しが持っていた品です、左様さ、御新造が此方《こちら》へ縁付《かたづ》いてから二日目のこと、丁度三年以前の五月三十日の晩ですが、水道町の仕事の帰りに勘定を取って、相変らず一口やった揚句《あげく》の果《はて》、桜の馬場の葭簀張《よしずばり》、明茶屋《あきぢゃや》でうと/\寝入ると、打《ぶ》ちまけるような大夕立にふと気が付いて其処《そこ》らを
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