ナございます。只《と》見ると、文治は痩衰《やせおとろ》えて鬚《ひげ》ぼう/\、葬式《とむらい》の打扮《いでたち》にて、裃《かみしも》こそ着ませぬが、昔に変らぬ黒の紋付、これは流罪中|上《かみ》へお取上げになっていた衣類でございます。お町は嬉しさ余って途方に暮れ、手持無沙汰に狼狽《うろた》えて居りましたが、文治の姿を見るより玄関まで出迎えまして、両手を突き、
町「旦那様、御無事で……」
と云ったきり、後《あと》は口がきけません。文治は落着き払って、
文「これは皆さん、ようこそお出で下さいました、流罪中は万事お心に懸け、よくお世話下さいました、千万|辱《かたじ》けのう存じます、おゝ町か、留守中さぞ苦労しなすったろう、よう達者でいてくれた、文治も皆さんの助力《おちから》と天の助けで、再びお前に逢うとは此の上の喜びはない、さア皆さん奥へお出で下さいまし、ゆるりとお礼を申しましょう、いや皆の衆、予《かね》て覚悟とは申しながら、何《なん》とも彼《か》とも申しようのなき心配をいたしました、いっそあの時死んだら此のような苦労は致すまじきに、皆々様に余計な心配を掛けまして、飛んだことを仕出来《しで
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