ト、その赦免状の三宅島に着きましたのは、天明《てんめい》の前年|即《すなわ》ち安永《あんえい》九年初夏の頃でございます。さてまた本所業平橋の文治留守宅におきましては、主人《あるじ》が流罪の身となりましたので、お町は家計を縮め、森松を相手に賃仕事などして、其の日/\を煙を立てゝ居ります。松屋新兵衞を始めとして亥太郎、國藏も文治の恩誼《おんぎ》を思い、日々夜々《にち/\よゝ》稼ぎましては幾許《いくら》かの手助けをして居ります故、お町は存外困りませぬ、或日《あるひ》友之助が尋ねてまいりまして、
友「へえ、お頼み申します、友之助でござります」
森「やア友さん、よく来たなア、大分《だいぶ》暑くなったじゃアねえか、さア上らっしゃい」
友「時に御新造様は御機嫌宜しゅうござりますか」
森「あゝ別に変った事もねえね」
友「それは何より結構、へえ御新造様、おや今日《こんにち》はお土用干《どようぼし》でござりますか、これは皆旦那様のお品々、思い出すも涙の種、御新造様世の中には神も仏もないのでございましょうか…これも旦那様のお品でございますな」
町「それに就《つい》ていろ/\お話があるのでございま
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