オたな、御近習お燈火を」
 と御前の座敷へ踏込《ふみこ》み、何やら難題を吹掛《ふっか》けましたので、松平の殿様も弱り果て、
 殿「何事も内済《ないさい》に致せ、これ誰《た》そある、金子を遣《つか》わせ」
 近「はゝッ」
 とまご/\して居ります処へ、後《うしろ》の襖《ふすま》を押開けて、当家の老臣|妻木數馬《つまぎかずま》という者が入《い》り来《きた》りまして、
 數「その金子は手前どもが遣わします、御前様にはお奥へ/\、これ御近習衆、御前をお奥へお連れなさい」
 近「はゝア」
 と殿様のお手を取って奥へ連れ込んでしまいました。老臣數馬は容《かたち》を正し、
 數「これ大伴|氏《うじ》、いや先生もう少しお進みなされ、さて先生、この婦人は何《いず》れからお連れなすった、御殿女中なら御宰《ごさい》(下供《したども》)を連れべき筈なるに、男|一人《いちにん》同道するとは如何《いか》にも不審と承わりましたゆえ、御殿へまいり、篤《とく》と様子を取調べました処、左様な女はござらぬという、さア何処《いずこ》の奥からお連れになりました、大伴氏|如何《いかゞ》でござるな」
 と問詰められて、流石《さすが
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