ナござりますか」
 蟠「はい、左様にござります」
 近「御前様もお待兼《まちかね》でいらせられます、直《す》ぐお通り下さりませ」
 蟠「然《しか》らば御免を蒙《こうむ》ります、さア何《ど》うぞお先へ」
 近「どう致しまして、先《ま》ず/\先生、お通り下さいますよう」
 蟠「これは恐入ります、仰せに従いまして失礼を致します」
 と先立って御殿へ上《あが》る其の様子は、如何《いか》にも事慣れたものであります。

  十九

 このお瀧という女が、先に申上げました阿部忠五郎という碁打の娘で、碁は初段の位《くらい》でございます。諸家《しょけ》へ奉公致して居りました故、なか/\多芸な娘でございますが、阿部の悪心から終《つい》に島流しになるような不運な身になったのでございます。御殿女中というものは苦労のない割合に、身体を動かしますから、大概は栗虫《くりむし》のように太りかえって、其の上着物に八口《やつくち》がありませんから、帯が尻の先へ止ってヒョコ/\して、随分形の悪いものであります。お瀧は其れとは打って変って成程|眉目《みめ》形は美しゅうございますが、丈《せい》恰好から襟元《えりもと》までお尻の
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