ャたいという志があるならば、必ず譲るように計らってやろう、それ故お前も昔は音に聞えた悪党、残念では有ろうが善《よ》く/\謹しんで赦免の日を待つが宜《よ》かろう、何《ど》うだ」
 瀧「えゝ、お有難う存じます、私《わたくし》は決して貴方《あなた》をお怨《うら》みは致しませぬ、何《ど》うぞお慈悲をお願い申します」
 文「よし、そういう了簡なら、お前の身は此の文治が引受けて助けてやる、これ一同、此の後《ご》この婦人に対して少しにても無礼を致すと其の分にゃア棄置かんぞ、さアお瀧殿、平林の屋敷の有金《ありがね》は勿論、衣類其の外《ほか》入用《いりよう》の品は何《なん》なりと持って行きなさい」
 もう是までの運命かと半ば諦めて居りますお瀧は、文治の情《なさけ》で一命を取留めた其の上に、只今の情厚き言葉に悪婆《あくば》ながらも感じたものと見えまして、
 瀧「お有難うございます」
 と泣伏して居ります。罪人どもは、
 「旦那、金や衣類を遣《や》るなんて、そりゃア余《あんま》りお慈悲が過ぎらア、せめて其れだけは……」
 文「あゝ、そう/\、気の毒ながら米は其の儘文治が受取ります、明日《みょうにち》は後役《
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