・《こ》れへ/\」
 お瀧という妾は恐る/\文治の傍《そば》へ坐りました。
 文「お前は何《なん》という名じゃ」
 瀧「瀧と申します」
 文「今日のことは嘸《さぞ》お前も立腹したであろうが、何事も成行《なりゆき》じゃ、諦めなさい、さて今日の始末は定めてお聞及びであろうが、お前が夫の平林|氏《うじ》が非道の扱いに堪兼《たえかね》て、一同の囚人《めしゅうど》が徒党を組んで既《すで》に屋敷へ押懸けようと云うところを、此の文治が止めたが、つい過《あや》まってお前の夫を殺してしまったのは誠に気の毒の事であった」
 一同「なアに、そりゃア己《おい》らが殺したんだ」
 文「まア/\静かにしてくれ、さア私《わたし》ゃアお前のためには夫の仇《あだ》、その仇の此の方《ほう》がお前を呼付けて斯様《かよう》なことを申したら定めし心外に思うであろうがな、何事も是までの因縁と諦めて、一時《いちじ》此の場の治まりの付くよう勘忍してくれ、然《しか》し其の子供が成長して私を仇と狙《ねら》うなら、其の時は又快く打たれてやろう、それまでは何事も私《わたし》に任せてくれんか、その内子供が十五歳になって親の後役《あとやく》を継
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