スのみか、勿体なくも平林殿の後役を不肖《ふしょう》文治に仰付《おおせつ》けられました、一同左様心得ませえ」
一同夢かとばかり暫《しば》し呆気《あっけ》に取られて居りましたが、
一同「え旦那、貴方《あなた》へお取締役を申付けたのでござんすかえ」
文「如何《いか》にも」
一同「それじゃア嬉しいなア、流石《さすが》にお役人様にゃア眼が有らア、時に私《わっち》どもが徒党の罪は何《ど》うなったのでござんすか」
文「そち達は好んで徒党いたした訳でない、平林の非道に堪《た》え兼て起った事ゆえ、今度に限り其の罪を宥《ゆる》すとの事じゃ」
と聞くより一同|雀躍《こおどり》して、
「えっ無罪、え、も勿体《もってえ》ねえ、旦那様お有難う存じます、天道様《てんとうさま》は正直だなア」
と一同手を合せ大声を上げて泣出しました。文治も共に涙に暮れて居りましたが、稍《やゝ》あって声を和《やわ》らげ、
文「えゝ各々少し文治がお前達にお頼みがあるが、快く聞済《きゝす》んでくれるか」
一同「そりゃア旦那様、何事かは存じませんが、私《わっち》どもの命を助けて下すった恩人の仰しゃること、何事によらず承わり
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