Jは致さぬぞ、最早これまでなり」
と身支度して切腹の様子でございます。
一同「旦那、何を為《な》せえます、あなたは何も知らねえ事、素々《もと/\》こちとらが始めた仕事です、仮令《たとえ》何《ど》の様な事が有ろうとも決して旦那に御迷惑は掛けません、さア斯《こ》うなるからは仕方がねえや、遣《や》る所まで遣付《やっつ》けろ」
文「此の上尚お徒党を組んで乱暴な振舞をしては上《かみ》の御法に対して済むまいぞ、先《ま》ず一同控えろ」
一同「何《なん》の、何《ど》うせ晩《おそ》かれ早かれ命の無《ね》え身体だ、それ遣付けろ」
文「まア/\暫く」
と制して居ります処へ、江戸より送りの役人を始め地役人《じやくにん》一同表の方へ駈付けてまいりました。切腹と覚悟したる文治は、諸役人の姿を見るより門外に飛出し、後《あと》に続く罪人一同を制しながら、ピタリと両手を支《つか》えて、
文「え、恐れながら文治申上げ奉ります、只今不法の振舞、皆|私《わたくし》が仕業《しわざ》でござります、御吟味の上お仕置を願います」
時に江戸役人は、
「其の方共一同静かにいたせ、文治とやら、只今不法の振舞は其方《そち》
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