ネく、踵《きびす》を反《かえ》して奥の方へ逃込みました。何をするか知らぬと思う間もなく、三日半も干乾《ひぼし》にして庭樹《にわき》の枝に縛り付けてあった囚人《しゅうじん》目がけてズドンと一発放つや否や、キャッという叫び声。最早これまでなりと文治は飛鳥の如く飛上り、平林が振上げて居ります鉄砲の手元へ潜り付き、一当て急所へ当てゝ倒れるを見向きもせず、吊し上げたる三人の縄を解き、疵《きず》を検《あらた》めて見ますると、弾丸《たま》は外《そ》れたものと見えて身体に疵はありませぬ、尤《もっと》も鉄砲の音に胆《きも》を消したものと見えて、三人とも気絶して居りまする。
十六
樹《き》の枝に縛り付けられて居ります三人の囚人《めしゅうど》は気絶して居《お》るので、文治は冷水《れいすい》を吹掛けて介抱して居りますると、後《うしろ》の方に当ってわア/\という騒がしい声、振向きますと、表に待たして置いた罪人の内七八人の逸雄《はやりお》が踏込《ふんご》んでまいりまして、最早《もはや》平林を刺殺《さしころ》してしまいました。文治は恟《びっく》りして、
文「えゝこれ何事じゃ、役人を殺すくらいなら今まで苦
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