蛯、、お手当を減ずるというは如何《いかゞ》かと存じます、お慈悲を以てお改め下さいますようくれ/″\も願い奉ります」
 平「うるさい、いや、貴様も同類だな、者ども縛り上げえ」
 文「かくの通りお役人様方|抜刀《ぬきみ》の下《もと》に居りますこと故、縛られて居《お》るも同様、此の上お縄を頂戴いたしますとも決して厭《いと》いは致しませぬが、何卒《なにとぞ》右の願いお聞済《きゝずみ》の上にて……」
 平「成らぬ、それ打て」
 下役「はっ」
 と抜刀《ぬきみ》を鞘《さや》に納め、樫棒《かしぼう》を持ちまして文治の脊中《せなか》を二つ三《み》つ打ちましたが、文治は少しも動く気色《けしき》もなく、両手を支《つ》いたまゝ暫く考えて居りました。何思いけん不図《ふと》起き上りまして、又打ち来《きた》る利腕《きゝうで》をピタリと押え付け、
 文「無法なことを為《な》さいますな」
 役「あいたゝゝ、あいたゝ」
 見るより平林は烈火の如く憤《いきどお》り、
 「それ、その悪党を切ってしまえ」
 役「畏《かしこ》まって候」
 と抜刀《ぬきみ》の両人、文治の後《うしろ》より鋭く切掛けました。其の時早く文治は前に押え
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