ト偏《ひとえ》に御勘弁の程を願い上げ奉ります」
 平「して只今其の方《ほう》が申したお上よりのお手当とは何事じゃ」
 文「はゝア、手前は只今島に着きましたばかり、一向島内の御法は弁《わきま》えませぬが、何か一箇年《いっかねん》に両三度罪人どもへ娑婆飯とか申して米の御飯《ごはん》を下され候由、僅《わず》かの事を楽しみに歳月《としつき》を送ります無気力の囚人ども、お助け下され候わば一同悦ばしく存じます、此の儀|偏《ひと》えにお汲取り下さいますよう」
 平「黙れ、それはな、上のお慈悲を以て下さる事ではあるが、本年は囚人どもが平生《へいぜい》の不届少からぬに依って、白飯《しろめし》のお手当がないのじゃ、虫けら同然の其の方どもとは云いながら、人間の皮を被《かぶ》って居《お》るからにゃア少しは考えて見るが宜《よ》い、然《しか》るに上のお慈悲なきは身に罪ある故と知らず、徒党を組んで乱暴いたすとは容赦ならぬ曲者ども、一人《いちにん》も免《ゆる》すことは相成らぬ、皆殺しに致すから左様心得ろ」
 文「お言葉に背《そむ》くは恐入りますが、平生不届の事がございますれば、それ/″\御処分|方《かた》もございまし
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