ニ、
役人「やい/\貴様は何者か、ぐず/\すると打切《ぶっき》るぞ」
文「はい、私《わたくし》は只今江戸表より流罪になりました囚人《めしゅうど》でござります、只今一同の囚人の大騒ぎを見るに忍びず、一旦鎮め置きまして段々仔細を聞きましたるところ、囚人に有勝《ありがち》の食料のこと、棄置かれませんゆえ、お役人様へお目通り歎願いたしとうござります、宜しゅうお取次を願います」
と落着き払って述立てました。
十五
文治の言葉を聞いて役人は目に角を立て、
役「何《なん》だ新入《しんいり》の囚人《めしゅうど》だ、生意気な奴だ、打据《うちす》えるぞ」
文「これはしたり、囚人一同の者に代り申上げます事|故《ゆえ》、御無礼の段は御容赦下さいまして、一度はお聞済《きゝずみ》の上、お頭様《かしらさま》に拝顔の適《かな》いまするようお取計《とりはか》らいを願います」
役「小癪《こしゃく》な奴だ、新入の癖に一同の総代とは何事だ、えゝ面倒だ、切殺せ」
と一人の役人が抜刀を振上げました。此の時に奥に居りました平林が、「これ/\少し待て」と玄関正面に立上り、文治を眼下に見下《みおろ》しまして、
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