謔、から、まア暫く静かにして下さい」
一同「旦那、そりゃア兎《と》ても駄目でござんす、訳を云ったところが兎ても分る奴じゃアありません、いっその事に」
文「まア/\待ちなさい、兎も角も己《おれ》が往って詫びて見る、己が挨拶をするまでは決して手出しをしては成らんぞ、悪口《あっこう》しても棄置かんぞよ、いよ/\肯入《きゝい》れなければ兎も角も、血気に逸《はや》って心得違いをいたすまいぞよ」
と一同を制して、其の中の重立《おもだ》ちたる一人《いちにん》を案内に立たせまして、流罪人取締の屋敷へまいりますると、二三の若者が抜刀《ばっとう》で立って居ります。そんな事に恐れる文治ではございませぬから表に一同を待たせ置き、身に寸鉄も帯びず、泰然自若《たいぜんじじゃく》として只《たゞ》一人《ひとり》玄関指してまいりますと、表に居ります数多《あまた》の罪人が、「旦那、危ねえ、危ねえ、抜いてら/\、そうれやッつけろ」と気早《きばや》な連中は屋敷の内へ飛込もうと致します。
文「これ/\無礼を致すな、己にも心得があるから暫く静かにしていろ」
やがて文治は抜刀を携えたる若者の面前に膝を突いて一礼いたします
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