ケて、それ/″\牢内に入れ置く例でございます、文治を乗せたる船が海上|恙《つゝが》なく三宅島へ着きますると、こゝに一条の騒動|出来《しゅったい》の次第は次回に申上げます。

  十四

 護送役人の下知《げじ》に従いまして、遠島の罪人一同上陸致しますると、図らずも彼方《あなた》に当りパッパッと砂煙《すなけむり》を蹴立《けた》って数多《あまた》の人が逃げて参ります。村方《むらかた》の家々にては慌《あわ》てゝ戸を閉じ子供は泣く、老人は杖《つえ》を棄てゝ逃《にげ》るという始末で、いやもう一方《ひとかた》ならぬ騒ぎでございます。何事か知らんと一同足を止めて見ますると、向うから罪人が四五十人、獲物《えもの》々々を携《たずさ》え、見るも恐ろしい姿で、四辺《あたり》に逃げ惑《まど》う老若男女《ろうにゃくなんにょ》を打敲《うちたゝ》くやら蹴飛《けと》ばすやら、容易ならぬ様子であります。中には刃物を持って居《お》る者もあります。此方《こなた》は数十人の役人、突棒《つくぼう》刺叉《さすまた》鉄棒《てつぼう》などを携えて、取押えようと必死になって働いて居りますが、何しろ死者狂《しにものぐるい》の罪人ども、荒
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