ェ》に面《おもて》に一種の愁《うれい》を帯び、総立《そうだち》に立上りまして、陸《おか》を見上げる体《てい》を見るより、河岸に居《お》る親戚故旧の人々はワッ/\と声を放って泣叫ぶ。その有様は宛《さなが》ら鼎《かなえ》の沸くが如く、中にもお町は悲哀胸に迫って欄干に掴《つか》まったまゝ忍び泣をして居りまする。さて三宅島は伊豆七島の中《うち》でありまして、最も罪人の沢山まいる処であります。先《ま》ず島へ船が着きますると、附添の役人は神着村《こうづきむら》大尽《だいじん》佐治右衞門《さじうえもん》へ泊るのが例でございます。此の島は伊豆七島の内で横縦《よこたて》三里、中央に大山《おおやま》という噴火山がありまして、島内は坪田《つぼた》村、阿古《あこ》村、神着村、伊豆村、伊ヶ島村の五つに分れ、七寺院ありて、戸数千三百余、陣屋は伊ヶ島に在《あ》りまして、伊豆国《いずのくに》韮山《にらやま》郡代官《ぐんだいかん》太郎左衞門《たろうざえもん》の支配、同組下五ヶ村名主|兼勤《けんきん》の森大藏《もりだいぞう》の下役頭《したやくがしら》平林勘藏《ひらばやしかんぞう》という者が罪人一同を預かり、翌日罪状と引合
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